詩のようなもの

2009年11月11日 (水)

今日も空は流れてる
風は僕を秋の隙間へと誘(いざな)うし
星は報われなかった情熱を密かに覚えている

あの鮮烈な孤独と飢えが
今日の僕の目覚めを祝福し
あの途方に暮れた血まみれの季節が
今日のささやかな陽だまりをやわらかに照らし出す

ある人はそれを鋭い眼球で満たし
ある人は冷たいナイフで満たすけれども
これからは僕は
僕のほんとうに好きなものだけを
この草原に飾ってゆこう

こどものころに雪の結晶をあつめたように
このかすかに息づく時間たちを
ひとつずつひとつずつ大切に
あつめていこう

たとえ人が笑っても
ぼくの草原は
きみの草原は
あの日夢見た光で満たされるだろう

奪われた過去は取り戻され
壊された心は照らし出され
殺された子供は飛び立つだろう

今、ひかりはじめる

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2009年7月 9日 (木)

哀しいのは何故
夜が僕を追いかけるのは何故
明日が見えないのは何故
夢見た日々が壊されたのは何故
僕がまたここに戻ってきたのは何故

雨が降り
空から落ちる見えない重荷が
秋の風を遮り土を覆い
高慢な孤独達を傷つける
地下から伸びる報われない手達は
今夜も僕を呼んでいる

いつしか僕は蜜の池にからめとられ
溺れてしまった
焼け野原を抜けて伸びていた
たったひとつの道が埋もれてしまった
穴の底から見上げた凍った星空の静謐さは
騒がしい足並みにかき消され
その生ぬるい風の痛みに僕は倒れた

彼らがいくらネオンにふりまわされても
僕らは僕らの あの透明な光に向って歩こう
晴れた秋の日に泉のほとりを歩くように
枯れた花に水をそっとやるように
夕焼けの雫を拾い集めるこどもたちのように
その遠さに僕は今日もため息をつくけれど

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2008年8月11日 (月)

誰もいなかった
求めたものを求められ
望んだものだけが奪われた

僕が君を欲するほど
僕が君とつながりたいと望むほど
僕の大きすぎた夢が僕をわがままにし
君を僕から遠ざけていった
世界から押し寄せてくる見えない涙が
僕を 僕達を 君を流していった
僕に積み重なった報われない日々達が
君を 僕達を 僕を壊していった

あの日僕を見捨てた誰かが
僕を迎えに来てくれれば
僕は今すぐに笑えるだろう
僕を抱きしめるその暖かさは
僕の壊れたすべてを癒すだろう
だけどその人は決して迎えには来ない

君の発する柔らかで強烈な光に飲み込まれないように
僕はあの風の吹き荒ぶ夜に精一杯留まっていよう
この壊された幼い影を優しく抱え
ひとりで世界を飛んでゆこう
鳶色の丘の向こうから聞こえる
あの夜の幼い無音の泣き声に
僕だけはいつも耳を傾けていよう
切なく光る木々や星々や人々は
そんな僕をとても暖かく慰めてくれる

やがて見捨てられた子供は救い出され
凍った太陽は溶けてゆくだろう
水流は哀しみを少しずつ洗い流し
清潔な風が微かに確かに吹きわたるだろう
絡まった根はゆっくりとほどかれ
そこから染み出る黄色い生命が
いつか折られた花達を
いびつにまっすぐに再生してゆくだろう

僕はそしてその先で
君と 君のいる世界と
繋がるんだ

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2008年5月23日 (金)

幾重もの古びた絹のカーテンを縫って注がれる
あの遠い木漏れ日を受けたガラスの箱達が
羽衣のように淡く漂う霞の中
網目模様を描きながら舞うように流れてゆく
僕はその哀しい懐かしさに手を伸ばすけれど
もう決してそれをつかめはしない

地上のその軽薄な空気に耐え切れず
僕は深海へと独り潜っていった
瓦礫や望みや僕の存在すらが世界から剥がれゆき
太陽の一切届かないえぐられた海の底の底に
本当の光を放つ石だけが
静かに孤独に透明に残った
だから僕はそれをひっそりと確かに抱いた

これからどこへ行くことになろうとも
僕はこの石をいつまでも持っていよう
それが月の下で切なく揺れるときは
僕はそれを独り磨こう
それが太陽の赦しを浴びて叫ぶときは
僕はその震えを君にわけよう

夜の砂漠で星や風までもが僕を刺すように見つめ
再び繋がり始めた世界と自我のせめぎあいに
僕はどうしようもなく揺さぶられている
今はまだ命を繋ぐのがやっとだけれど
この哀しすぎた物語を
きっと僕が結末によって輝かせよう
きっと君にその光る軌跡を届けよう

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2008年4月20日 (日)

ある人が生

ある人が生きた

その人はとても力強くしなやかに細やかに歩んだから
僕は一粒の雨が湖を求めるようにその軌跡に惹きつけられ
そして何かを思い出すためにそれを辿った
永遠に光って見えたその道は
しかし突然に朝靄の中へ消えてしまった

長すぎる濁流を越えてやっと掴んだ星達は
やがてさらさらと流れゆき
僕の手のひらからこぼれるように落ちていった
それは僕の手に熱と寂しさの感触を残し
明日から昨日へと消えていった

振り回し振り回される荒々しい波の中
とらえとらわれて追われ溺れるように歩いてきた
そして僕はとても付随的に
この哀しみをまっすぐに湛えて夢のように輝く泉を
その弱すぎる真っ黒な瞳に遠く鮮明に映していた

命を失ったあらゆる形式的な物事や装いを
銀河を含んだ清潔な水が洗い流してゆく
そこではもう未来への熱望は過去の密葬を意味しない
この極限に芯まで凍える澄んだ道の先で
春の花の予感が僕を呼んだ

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2008年4月10日 (木)

自分か人か

自分か人かが壊された
迎合か拒絶かしか無かった
思慮は依存にしかならず
自立は分断としかならなかった
完全でないものは見捨てられ
理想と生活は裂けられていた
魂は形の中で消えてしまった
そんな次元を僕はもう突き抜けたかった

ある時は 失望と共にうつむいた
ある時は 流血と共に立ち向かった
それらを悠然と超えて
全てを含んで永遠に伸び
まったく透明に光る道筋
そんな道を僕はもう歩んでゆきたかった

このどうしようもなく過ぎてゆく日常も
眠れず迎えた朝に空を覆った灰色の靄も
謳歌の桜咲く頃に一人で見つめた暗闇も
潰れた太陽と乾いた蝉の声の下
歪んだ汗の匂いの中に舞っていた何かの割れた破片も
それを背に一人で嗅いだ焦燥の匂いも
全てに見捨てられた暗い日々達はみな
やがて洞穴の奥で静かに月の涙へと姿を変え
時に僕を時代を超えた湖へと解き放ってくれる
そこでは一切は明白に静寂に浮かび
僕はもうすべてに抱かれていて
谷底をさらさらと流れる地上の哀しみは
とても細やかにきらきらと彩られている
そんな景色を僕はいつまでも覚えていたい
そんな世界に僕はもういつまでもいつまでもとどまっていたい

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強迫と共に

強迫と共に星を求めた
伸びすぎた触手は空を覆い
君の顔を隠してしまった
僕は初めから持っていたのに
この静かに透明に光る石を
あの季節の無い世界の川底に
僕はそれを君にあげればよかった

僕の軸に向かって
外界の波が押し寄せてくる
僕は静かな海を纏いそれを流そう
何層もの膜を経て
星はろ過され
少しの光は僕の軸に響き
真珠は紡がれてゆく
それは月の下で懐かしく瞬くだろう
そして僕はそれを君に投げよう

ただ煌めきを追いかけてきた
混じりけの無い僕ひとりの切実な夢中が
この輝きと熱と寒さとを失うことなく
透明に世界と繋がることを今願う
憎しみはやがて意味を語り始め
いつか抱かれた光の波は少しずつ顕現し
僕達を導いてゆく

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僕に入り込

僕に入り込んで僕を揺さぶり続ける
この激しすぎる流れを泳ぎきって
しばらく終りに佇みたくなる
思い出と永遠の多幸感に溢れる終結の泉に
いつまでもぷかぷかと浮かんでいたい
だけど流れは終わることなく
いつも新しい流れが始まるから
僕は溺れそうになって
もう目新しくも無い悲しみと諦めと共に
また仕方なく泳ぎ始める

日々の生活の奥でゆらめく星々を
早くこの手に掴んで抱きしめたい
その懐かしい神々しさに
僕の心はいつでも打ち震えていたい
だけど生活は消えることなく
いつもきらめきを隠してしまい
冬の真夜中に見た花火を
ぼけた花粉の生殖で濁してしまうから
僕は仕方なく
それを半ば無理に楽しむ
そうすれば破綻は訪れないから

だけどいつか
僕はきっとどうにか流れも止めて
月を隠してしまった日常の塵も振り払うのだ
それはちょうど
十億年前の壁画の鼓動を呼び戻すように
僕は今夜もその美しさを
夢に見る

いつかいつか。
きっときっと。

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待たされた

待たされたくない
待ち望みたい
踊らされたくない
歌いたい
壊されたくない
守りたい
もうこれ以上 奪われたくない

笑われたくないけど
笑われてもいい
嫌われたくないけど
嫌われてもいい

いつもいつもそんなにかまわれたくない
でも いつまでも僕のこと 忘れないでいて

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眠れずに明

眠れずに明ける空を見つめる君よ
黒の底から白く潰れた空を見上げる君よ
浮島を避けて通り過ぎゆく水の流れを眺める君よ
ある日君の池に投げ込まれた一言が
眠りの間に波を広げて
異国に通ずるあぜ道を見たことない色で照らすだろう
それはやがて地軸さえもずらすだろう
一つの思いは枯れゆくモノクロに彩色を注ぎ込み
一つの思いは崩れゆく魂に慰めの忘却を与え
一つの思いはいくつもの道を創り出す
眠ったままの依存の群れによる批判
無知の嘲笑と大言壮語の嵐の中
海路に迷い真夜中の大海原に荒れ狂う人々の中
どうか煌々と光る灯台であれ
冬の草原で星空を見上げざわめく何か
遠い町で咲く花の匂いを感じ取り湧き立つ何か
それがきっと 君なのだから

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この雨が

この雨が
無限の概念の対立に乱れた社会を飲み込み
整合の上に頭でっかちにそびえる建物を破壊し
高潔にスタイリッシュに建設された表層の思想達を
洗い流してくれないだろうか
その正義だか悪だかが晴れ上がった時
全ての結果が無に帰った後
たった一つの証が残る
地下水脈の浸透した大地の奥深くにまで
実感として泥まみれになってしっかりと根を張った
一輪の美しい白い花
君はきっと小さい頃は
それだけを手に持って
楽しいことだけを考えて
きらきらと笑っていた

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天から射す

天から射す希望の光は
現れては消え
消えては現れ
現れては消える
無数の人は君を訪れ
そして去ってゆく
あらゆる事象が君の中へと入り込み
君の芯を揺るがす
怒りや憎しみ、不安や恐怖が
幾度となく
君を通り過ぎてゆく
君はその繰り返す嵐を経て
湖の底に埋もれ残った
古代の壁画だけをすくい上げ
それを磨き続ける
内臓から際限なく染み出す涙を越え
銀河に浮かぶルビーの砂粒だけに焦点を合わせ
理想の一方の端と
本性の一方の端をつなぎ合わせる

そして物事はまた
通り過ぎてゆく
舞台は少しずつ
あの空に
近付いてゆく

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僕は 空も

僕は
空も飛んだし
トランペットも吹いたし
星から星へと旅もしたし
遠い昔のヨーロッパの町も泳いだ
淡いピンク色の太陽が
ベージュの風に吹かれる草原といっしょに
笑っていた
あの子はいつのまにか
虹を渡って家にやって来ていたし
ぼくたちはみんな
とうもろこし畑で踊っていた
海の匂いの風の下
止まった雲の影の下
ふいに突き落とされ
何かの拍子で開いた目に映る
灰色に色あせた天井
傾いた堅いベッド
テレビから流れる騒がしい音
見飽きた壁のしみ
もどかしさを伴った悔しさが
今日もまた僕を うんざりさせる

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みなが君を

みなが君を忘れた頃
光は銀河を覆うだろう
心にひびの入る蒼さで
空は君を掴むだろう
高原の露は頬を伝い
空の星は一粒一粒地上に降りてきて
祈りは花びら一枚一枚に宿るだろう
ひび割れた存在は
エメラルドの水を湛えた太古の湖になり
すべての寄り道は
色めいて生きるだろう
隠されていた星達は
燦燦と溢れ
君が光を求めるかぎり
朝陽は君の瞳の中
いつまでもいつまでも昇るだろう

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数多のガラ

数多のガラクタよりも一つの宝愛したい
無数のモノより一つの思い掴んでいたい
欲望と利己の大合唱から
サバンナでオリオン見つめる白象の声聴きわけたい
遠くでそう願う君は誰

虚ろな夢が渦を巻き
数値を競ったばっかりに
数値に追いつめられ歪んでしまった
その螺旋階段から抜け出して
廃墟に埋まった光る石に出逢うのだ
それは数は少ないが
確かに存在するのだから

ただその眠れるフィルター通して
星ひとつさえ生まれれば いいのさ。
形や道はどうだって いいのさ。

さあ今夜夢の中
因果と責任の矛盾を乗り越え
新緑の大地に足をつけ
見えない翼に導かれ
同じ思いの声達が
一つの曲を奏でる世界へと。

今、繋がる―

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永遠の闇を

永遠の闇を抱えた存在達は
永遠に光目指して
夜を越えてゆく
もつれた足で角を曲がる度に遠く離れてゆく
あのもどかしい幻の光を追いかけて
大きなうねり越えるたび
美しく切なく水分を放ちながら
ゆっくり哀しみ結晶に変わってく
渦を巻いて絡まった糸の世界達は
何かの命を吹き込まれ
漸う真っ直ぐ芯の通った一本の道となり
こちらの岸とあちらの岸とは繋がり
思いが形になる

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